ローテーション



という名の疲れ

はー疲れた。どっと疲れた。なんで疲れているかっていうと、朝からうざいことに鬼鮫が「イタチさんに団子を作ってあげましょう!」とかなんとか言ってかなりのハイテンションオーラをぶちまけていて、低血圧のあたしにとってはかーなーり迷惑な団子作りとやらに巻き添えをくらい、挙句の果てには「料理の足手まといですね。それでも女ですか!」とかなんとか言われたと思ったらネコをつまみ出すようにわたしは台所からつまみ出されたのだ。団子の作り方だあ?んなの知るかってんだ!だいたいわたしは昨日の任務で疲れきっているんです。目の下になんか軽くクマがありますよ。そんなわたしを使うだけ使っといて捨てるだなんて、鬼鮫、あんた紳士じゃないね。
どっと疲れてソファーに大の字で寝ていると、やっと起きたデイダラがやってきた。そのデイダラの顔、いや、髪を見た瞬間わたしは大爆笑してしまった。

「ぎゃはははははははははっ!!何、デイダラ、何?!」
「ああ?何が、うん」
「ひはははっだから、そ、その髪だってば!」
「だから何だってんだ、うん?」

わたしは持ち歩いている手鏡を突き出してやった。瞬間に、デイダラがぎょっとした顔になって、それにまた笑いそうになったわたしは必死にこらえた。
デイダラの、ビッグちょんまげ☆の髪型はいっつも艶々のくせに、今日はボッサボッサでまるで噴火したようになっている。騒ぎが気になったのかノッツ紳士の鬼鮫が台所から顔を出してきたが、噴出しそうになったかと思えばすぐにまた定位置に戻ってしまった。よほどおかしかったらしい。

「あんたの髪は活火山かってんだ」
「おいおいーねぼけてたか知んねえけど、全然気づかなかった……うん」
「ちょいデイダラ、こっち来て座ってみ!」
「なんだ、うん?嫌な予感がするんだけどよお」
「馬鹿!髪結ってやるだけだ、馬鹿」
「てめっ今馬鹿って2回言ったろ?!」
「どうでもよくね?!」

しぶしぶわたしの前にあぐらをかいたデイダラにも、目の下に少しクマがあった。散々昨日任務でドジでもしたのかは知らないが、傷もある。サソリにはさぞかし罵られたことだろう。だって大蛇丸が抜けたときに緊急でサソリとわたしとでツーマンセルを組んだのだ。あいつは文句ばっかり言うゲテモノ野朗で、チイッ何で俺が女と組まなきゃなんねえんだとか、チイッ10分も待たせてんじゃねえよクソが、とかチイッ足手まといになった瞬間お前のコレクション入りはほほ決定するからなとか。チィチィうっさかったといったらこの上ない。あの舌打ちを毎日聞かされるはめになったデイダラは少し気の毒、のような気がする。

「あんたも苦労してんだねー」
「は?何わけわっかんねえ事呟いてんだ、うん」
「べっつにー」
「てかお前すっげクマある、うん」
「そー言うあんたもね」
「……わ、まじだ。髪にばっかり気とられて全然わかんなかったな、うん」
「ははっ仲間仲間ー」
「う゛っ……それはそれで変な気分だな、うん」
「んだとこんにゃろっ」
「いてっ!!」

髪を引っ張られて痛がっているデイダラは放って置いて、こっからは鬼鮫を見返すための作戦を実行することにしよう。デイダラにはどんな髪型になるのかお楽しみってことで鏡は伏せておいた。結っている間にみるみる艶々になったデイダラの髪をまずは少しだけ、一本に束ねてあーやって、こーやって……フッ完成!

「鬼鮫みてみろーわたしの方がキッレーな団子作ったんですけど!」
「何がです……え゛」
「おいおい何えげつねえ声だしてんだ、うん」
「だ、だってデイダラさん、その変ちくりんな髪……」
「何だと?!うん?!おい、鏡かせ!」
「お好きにどうぞー。その前に、鬼鮫!あんたよりわたしのほうが団子速く作れたよ。どうだ、ざまあみろ」
「……さん、あなたって人は変なところだけ器用ですね……」
「おいあんた今、だけ、って強調したよね!?侮辱じゃんか、ええ?!どーいうことよ!」
「どーでもいいから、どうにかしてくれ、これ……うん」

わたしと鬼鮫が口論している間に、どうやらデイダラは勝手に鏡で自分の髪型を見て絶望したらしい。ビッグ爆発ちょんまげ☆から、鬼鮫よりうまい団子ヘア☆に変貌を遂げていたことに。まあデイダラには感謝することにしよう。なんせわたしの勝利のために、自ら媒体になってくれたのだから。
しかし低血圧のくせにわたしは今朝からテンションが上がってしまったらしく、これだけでは駄目だというような気がしてきた。

「デイダラ、行くよ!」
「はあ?!今度は何、うん?!」
「イタチの部屋にいってあんたの団子を食べさせんの!」
「……それって下ネタか、うん?」
「死ね」
「フゴオオッッ!!…………」
「ではいざ出発ー!!」

そのあと半分気絶したデイダラをひきずりイタチの部屋に入って、どうぞこいつの団子を食ってやってください!と言ったとき、わたしがデイダラと同じ目にあったのは言うまでもない。(勘違いもいいとこだ!!)


ハイテンション



という者への罰


(オレはゲイでもなければそんなえげつない団子を食らうつもりもない)(ええちょっと違うんだけど!)(問答無用……)(フゴオオッッ!!)


(08.07.22)