サソリがいつも被っている、あのヒルコとか言う傀儡の下に、本体がいるってことは知っていた。正直また変チクリンなおっさんなんだろーなとか思ってたけど、わたしの予想は盛大に裏切られたのである。あいつ自身は超爽やかボーイ(外見は)だったのである。 畜生、たぶんあいつは、悪魔だ死神だとかに、魂を売りやがったんだ。サソリ自身に聞くまで、そう思っていた。案外本気で。わたしがそう言うと、サソリは冷たい目でわたしを見た。いかにも、バカじゃねえの、って顔をしている。 「何その冷めた顔」 「いやほんとにこんな馬鹿が世の中にはいたんだなと思っただけだ」 「言うと思った」 超爽やかボーイのくせに口が超悪いんですけど。そんなのサソリがヒルコを被っている時から知ってたけどさ。でも個人的にショックだった。 「サソリって少年のくせにおっさんっぽくない?」 「俺は少年なんかじゃねえよ」 「は?!じゃあ何歳?」 「知らねえし。お前の2倍はあんじゃねえの」 「はあー?あんたもバカじゃないの。そんな事あるわけないじゃん!」 「だからデイダラみたいな馬鹿は困るんだ。俺の体はな、傀儡でできてるんだよ」 「え、じゃああんたって傀儡なの?」 「大体は」 「やっぱ悪魔に魂売ってるんじゃんか」 「ちげーよ馬鹿」 なんかここまで馬鹿馬鹿言われると、腹が立ってくる。やっぱり世の中って言うのはうまくいっていない。 つまりはここにいるサソリは、自分の体を手入れする限り一生あの姿で居られるというわけで。でもここにいるわたしは、何を願ってもただシワシワと老いていって、醜い姿で死んでしまうというわけだ。ん、なんだこの差は?おい、なんだ、やっぱり…。 世の中っていうのはうまくいっていない。 「なんかすっごく不公平」 「何がだ」 「だってさだってさ。あんたはずっとそんな姿で居られるけどさ、わたしは歳が立つにつれてシッワシワのババアになる訳じゃん。このうえなく不公平だよね」 「だったらお前も、人傀儡になるか」 「まじで?!」 「臓物は俺が引きずり出してやるがな」 血がサーっと引いていくのを感じた。わたしのパッと華やいだ顔は一気に凍りついてしまった。 やっぱ世の中って言うのはうまくいっていない。何かを得るには対価を支払うように、人傀儡になるには臓物やら何やらをどうにかしなければならないらしい。思わずため息が漏れた。こいつは永遠にこの姿で居る為に、生身を捧げたっていうのだ。魂がどうのこうのなんていう問題じゃないらしい。 「やっぱ遠慮しておくわ、あたし」 「何だよ、今更」 「わたしは悪魔に魂も生身も売るような、へまはしないから」 「おいおい…お前の場合、俺が悪魔って事かよ」 「あ、ほんとだ。でも、それってかなり……」 笑えない。 リアルにこいつは、悪魔なんだから。 (08.09.27) |