実はこのオレ水谷文貴は納豆という食べ物を生まれてから今日まで一切口にしたことがございません。
だってアレ臭いんだもん!臭うんだもん!不気味だもーんってことでなかなかチャレンジ精神が湧かず例の納豆を口にしないで生きてきました。
いやあ母さんもよく許してくれるなって思ってたら、実は母さんも相当嫌いらしく人に言える身分じゃないのよねって言ってた。納豆嫌いって遺伝すんのか、おい。そもそも食べてないからどう表現すればいいんだ。
曰くそれは「未確認物体受け入れ拒否」だそうで、どっちかって言うとオレはそのチンプンカンプーンな呪文みたいな言葉の方が受け入れ拒否しちゃいそうでした。は受け入れ拒否されたのが悔しかったらしく、今度は「納豆をお弁当に入れてきてあげる」と半ば真顔で言ってきた。もちろん、
全力拒否。
だってあれ臭いでしょ!臭うでしょ!不気味でしょーっ!どうみてもが持ってるドラえもん柄したプリチーなお弁当箱に入れてくる代物じゃないよね。絶対阿部とか花井とかに、存在拒否られちゃう。
全力拒否したらがすっごーくしょんぼりしたから、もっと別なお弁当作ってきてって言うと花が咲いたみたいに、ぱあっと輝く笑顔が咲いた。これでよかったな一件落着だなあって思って過ごして至るお昼休みに、たぶんドラえもん柄したプリチーなお弁当箱が入ってる包みをが持ってきた。
オレもあの時のみたいに、ぱあっと笑顔の花が咲いたのも、お弁当箱の厳重な包みが開封された瞬間に歪みました、はい。
何か一瞬でいつか言ってた可能の言葉が理解できました。「未確認物体受け入れ拒否」ってヤツを。
「わー何か赤いねえー」
「どれどれえ……って、うーん。ちょおっと変な色になっちゃってるね」
「納豆じゃないのは良いけど一体これは何の食べ物なのかなあ、ちゃん」
「え、キムチ」
ホホホホホホ。魔女参上しちゃいますよ。え、ちょまて、キムチって、えええええ。臭いね。此処教室だったらヤバイねえ。匂い充満でラフレシアなんて咲いちゃうかもって思ってたらがお箸で未確認物体(キムチと証明済み)をつまんで口の前に持ってきた。もっと別な形なら嬉しいのにね!
「水谷ほーらお食べい」
「ひいいいいっ無理、無理、みゅり!」
「ははっ。みゅりってなに」
「この状況何ー?!って……あ、」
「「「あっ」」」
「おい水谷。そー言うのはもっとよそでやってくれ」
「あー千代ちゃんだ!」
「ちゃんこんにちはー」
「あれ、皆何やってんの」
「シガポに部活のことで呼び出し」
「え、何でオレ呼ばれてないの?!」
「クソレだから」
「はあっ?!」
「あ、阿部くん……」
「いや、千代ちゃんいいんだよ。水谷ヘタレだから」
「ナイス」
「なんかもっとひどくねえー?!
「バカかお前等。オレはキャプテンで阿部は投球の組み合わせを相談で、篠岡はマネジだろ」
「あ、なんか安心ー」
「てか何か臭くね?」
「え、あ……確かに」
気づくの遅くないですか皆サン。ってか自分の彼女が彼氏をヘタレ呼ばわりするなんてすっごーく悲しいんですけどお!
満足げににぱにぱしてるの方に花井が寄ってきて、反射的にその状況を塞ぎたくなったんだけどキムチバリアが存在してて無理くさい。
花井の行動は机の上にある地雷を自ら踏みに行きまーすな行為で止めようとしても時既に遅し。
「……っ(バタアッ)!」
「花井君?!」
「ヘタレー花井死んじゃった」
「いやいや死んでないから!ヘタレじゃないから!」
「おいそれ、キムチだろ」
「そーだよ。でも阿部、これはコードネームで例のアレって呼ばなくちゃ」
「(意味不明でついていけねえ……)それ弟がやってたの見た事あるし。まさかこの世にもうひとりこんなバカが居るとはな」
「どうしようどうしよう、花井君どうしよう……」
「ほっとけ」
「ダメだよっ!」
「そーだぞ阿部。千代ちゃんの優しさを踏みにじるヤツはこのわたくしが許さーん!」
お箸を持ってキムチをひとつまみ摘んでていやーっ!とかいって阿部に向かって例のアレ爆弾を放ったは真顔でした。不意打ちだったもんで阿部はもろほっぺたに例のアレを喰らったらしく匂いをかぐなり刹那にして倒れてしまった。恐るべし、例のアレ!
なんかくらったほっぺたが例のアレのせいで腐食してそうでオレは目を細めた。
「あ、阿部くーん!?」
「ぬははははー正義は勝あーつ。ん?何か臭くない?」
「え?え?え?」
「もーちょっとお、水谷、臭すぎだよ!」
「なぬううー?!おいっ」
「千代ちゃん、わたし課題忘れてて提出お昼までだったの忘れてたんだあ。手伝ってえ!」
「え、あ……うん。いいけど、他のみんなが……」
「うん。何か臭いから置いてこ!」
篠岡は半ば強引に腕を引っ張られていってしまいました。何か悪魔と天使(そして納豆)は何処へって感じ。
例のアレにより殺陸地となったここは何かどよよーんとしてるし、のドラえもん柄したプリチーなお弁当箱のフタでドラえもんが「HAPPY☆」とか言ってるけど、全然ハッピー☆じゃねえ!!!
殺陸地には吹く風もない風が吹いてドラえもんのハッピー☆をカタカタ揺らしています。
そしてわたくし水谷文貴はその風により被害がこれ以上拡大しないようにせっせと例のアレを処理する為行って参りますお母様。
(08.06.22)