狂おしいほどの愛を、胸に刺す
寂しいとか、悲しいとか。そんな感情的な苦痛は嫌いだけれど。痛いとか、苦しいとか。そういう肉体的な苦痛は大好き。それらを分かち合い、共有し、関心できる人はもっ
と大好き。だから花井も大好き。「ふはは、まあた負けっちゃったあ…花井ジャンケン強いねえ。おかげでわたし、血だらけだ」「俺もともと弱いんだけど…。じゃあ、
はこれで、六回目…やるよ…」既に血だらけのナイフが、わたしの肉体を真紅に染める。次はふとももか…。なんとも言えない快感が波打つように押し寄せる。口から嗚咽
が漏れる。これはゲーム。二人がナイフを持ち、ジャンケンで負けたほうが苦痛を得られる。勝った方は苦痛を与える。わたしたちはこれを、"刺し合"と呼んだ。わたしはもう六つも傷があるのに、花井はまだ三つしかない。「花井…わたしも
う死んじゃうよ」「いいよ、別に。でも、もう死んでもおかしくないよね…」ザグッと音がした。じゃんけんで負けてもいないのに、また血が流れている。花井がせせら笑い
を浮かべている。息つく間もないほどに、意識が遠くなる。わたし、死ぬんだ…それだけが理解できた。それでもいい…最高の肉体的苦痛を、最愛の人が与えてくれたのだか
ら。感謝の気持ちを表したかったけれど、もう遅かった。意識がなくなる寸前、何かが頬に落ちてきた。そこからつたい、口の中に滑り込む。しょっぱい。そっか…花井。君、
泣いているんだね。
刺し、示す
(憐憫。もしくは愛をこめて刺しましょう)
(08.04.04)
(死ねた好きかも、ってこの頃思う)